「電験三種を取ったけれど、実務経験がない。ここから、どうやってキャリアを築いていけばいいのだろう?」
電験三種(第三種電気主任技術者)は、電気保安の現場で活かせる国家資格です。
一方で、資格を取得しただけで、すぐに一人前の技術者として仕事ができるわけではありません。
資格を取得した後、どのような環境で実務経験を積むのか。これまでの経験をどう活かせるのか。そして、将来的にどのような技術者を目指すのか。
今回は、電気保安・O&Mの現場を率いる抜水取締役に、資格をキャリアにつなげるための考え方や、実務未経験から経験を積む方法についてインタビューしました。

ーー電験三種を取得された方や、これから取得を目指す方に、まず伝えたいことはありますか?
抜水:
まず、電験三種という難関資格に挑戦し、合格された方には「本当におめでとうございます」とお伝えしたいです。結果を待っている方や、現在勉強中の方も、ぜひ自信を持っていただきたいと思います。
ただ、電気保安の現場に長く携わってきた立場からすると、資格取得はゴールではありません。
むしろ、実際の現場で実務経験を積んでいくためのスタートラインだと考えています。
電験三種の試験で学ぶ理論や計算と、実際の設備を扱う現場には違いがあり、資格を取得しただけですべての現場に対応できるようになるわけではありません。
私自身も、現場に出た当初は、教科書や図面だけでは分からないことがたくさんありました。
例えば、実際の設備には経年劣化もありますし、受変電設備の盤内の汚れや配線の乱れなど、見てみなければ分からないこともあります。そうしたことは、実際に見て、触れて、経験することで身についていきます。
だからこそ、資格を取得した後に「どこで、どのように実務経験を積むか」まで考えておくことがキャリアを築くうえで重要です。
ーー今、電気主任技術者を取り巻く環境には、どのような変化がありますか?
抜水:
電気保安の業界では、技術者の高齢化が進んでいます。長年現場を支えてきた技術者が次々と退職することが予想できます。
その一方で、太陽光発電所や蓄電池など、電気保安の対象となる設備は増えています。つまり、技術者が減っていく一方で、管理しなければならない設備は増えていくという状況です。
こうした背景から、電気保安を担う技術者の需要は、今後さらに高まっていくと考えています。技術者の世代交代が進む今は、これから電気保安の仕事を目指す方や、実務経験を積みたい方にとって、キャリアを築くチャンスが広がっている時期だと思います。

ーー実務経験がない方からすると「電験三種を取得しても、経験がない自分でも電気保安の仕事に就けるのだろうか」と不安になると思います。どのような選択肢がありますか?
抜水:
「実務経験がないから、電気主任技術者としてのキャリアを始められない」と考える必要はありません。
実務未経験から経験を積み、電気主任技術者としてのキャリアを築いていく方法はいくつかあります。
例えば、工場やビルなどでの自社選任です。
電気事業法に基づく自社選任では、電気主任技術者の免状を取得していれば、実務経験がなくても選任できます。選任された後は、自社の電気設備を管理しながら、現場で実務経験を積むことが可能です。
また、電力会社や特別高圧を受電する大規模な工場などでは、電験一種・二種などを持つ経験豊富な電気主任技術者のもとで、補佐的な立場から実務経験を積む方法もあります。保安規程に基づく日常点検や保守業務など、実際の保安業務に携わりながら経験を積むことができます。
オフィスビルや商業施設などのビル管理・設備管理も一つの選択肢です。
ビルメンテナンスでは、電気設備だけでなく、空調、給排水・衛生、消防設備など、建物全体の設備について幅広く知識を身につけられます。
また、実務未経験から挑戦する際は、これまでの経験を活かせる現場から始めることで、無理なく仕事の幅を広げられます。例えば、工場の設備保全を経験してきた方であれば工場、ビルメンテナンスの経験がある方であればオフィスビルや商業施設など、これまで培ってきた知識や経験を活かせる環境を選ぶことで、電気主任技術者としての実務経験を積んでいくことにもつながり、キャリアを築いていくうえでもスムーズです。
ーーほかに、今後のキャリアとして注目すべき分野はありますか?
抜水:
今後のキャリアという点で私が特に注目しているのが、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備の運用・保守(O&M)です。
注目している理由は大きく2つあります。
1つ目は、市場の成長性です。
国のエネルギー政策でも再生可能エネルギーは主力電源と位置づけられており、太陽光発電所や蓄電池などの設備は今後も増えていくと考えられます。そうした設備の点検・保守を担う電気技術者の需要は、今後さらに高まっていくでしょう。
そして2つ目が、直流設備についての知識や経験を身につけられる点です。
ビルや工場などの電気設備では交流が中心ですが、太陽光発電や蓄電池では直流を扱います。電気保安の現場では、交流設備に加えて直流設備にも対応できる技術者は、今後ますます重要になるはずです。
だからこそ、電験三種で学ぶ電気の基礎知識に加えて、現場で直流設備の経験を積むことで、対応できる領域を広げ、自分の強みにできます。
これから電験三種を取得する方や、異業種から電気保安の仕事を目指す方にとっても、資格を取得するだけで終わらず、その先でどんな経験を積むかを考えることが、将来の強みにつながると思います。
ーー抜水さんご自身は、これまでどのように実務経験を積んできたのでしょうか?
抜水:
私は高専を卒業後、電力会社に入社して送電業務に12年間携わり、その後、メーカーへ転職してメガソーラーの企画から施工管理までを担当しました。そして現在はユニバーサルエコロジーで、太陽光発電所や系統用蓄電所の電気保安・O&M事業を統括しています。
振り返ってみると、私自身も最初から一つの場所にいたわけではなく、電力会社、メーカー、ベンチャーと環境を変えながら現場で経験を積み、送電設備の設計・施工から、太陽光発電所の企画・施工管理、電気保安・O&Mまで、担当できる領域を少しずつ広げてきました。だからこそ、皆さんにも電験三種を取得した後にどんな経験を積むかを意識していただきたいです。
ーー「自分には実務経験がない」と思っている方の中にも、過去の経験を活かせるケースがあるのでしょうか?
抜水:
そこは、ぜひ一度、自分の経歴を棚卸しをお勧めします。
というのも「電気主任技術者として選任された経験がないから、自分には実務経験がない」と思っていても、実際の業務内容を確認すると、実務経験として認められる可能性があるからです。
例えば、主任技術者などのもとで補佐的な業務を担当していた場合でも、電気室やキュービクル(受変電設備)の日常点検・巡回、工場や施設の電気設備の確認・管理など、実務経験として認められる業務内容であるケースがあります。
また、工場の設備保全、ビルメンテナンス、自治体の施設管理など、電気主任技術者として選任されていなくても、これまでの仕事の中に実務経験につながる業務が含まれているケースもあります。
もちろん、実務経験として認められるかどうかは、実際の業務内容や設備の条件、必要な証明書類などの確認が必要です。
だからこそ「選任された経験がないから」「資格を取る前の仕事だから」と決めつけず、これまでどんな設備に関わり、どのような点検・保守をしてきたのかを整理してみてほしいと思います。
ーーなるほど。電気主任技術者として選任された経験がなくても、実務経験として活かせる可能性があるということですね。

ーー資格を取得して実務経験を積んだ先で、さらにキャリアを伸ばしていくには何が重要でしょうか?
抜水:
私は「電験三種×もう一つの強み」という考え方が重要だと思っています。
電験三種を持っている技術者の中で自分の市場価値を高めていくには、資格に加えて何かを掛け合わせていくことが大切です。
例えば「エネルギー管理士」や「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」など、別の資格を組み合わせる方法があります。
また、先ほどお話したように、直流設備についての知識や経験を身につけるのも方法の1つです。交流設備に加えて直流設備にも対応できれば、担当できる領域を広げられます。
つまり「電験三種を持っています」だけではなく「電験三種を持っていて、さらに何ができるのか」を考えていくことですね。
ーー技術者としてキャリアを築いていくうえで、資格や技術以外に大切なことはありますか?
抜水:
そうですね。
電気主任技術者は、電気工作物の安全を確保するために必要な権限と責任を持っています。そのため「法律で決まっているから、こうしてください」と、法令上必要なことを伝えるだけでも作業は可能です。
でも、技術者として大切なのは、お客様にとって何が大切なのかを考えて仕事をすることです。
例えば、盤の中をきれいに清掃する、配線を整理するなど、一見すると細かなことでも、丁寧な仕事の積み重ねが信頼につながります。
そして「どうすればお客様の発電所の売電利益を守れるのか」「どうすれば建物の資産価値を守れるのか」という視点を持つ。
単に法律上必要な点検だけではなく、お客様にとっての価値を考え、課題を見つけて提案することが技術者としての価値につながります。
ーーなるほど。技術や資格だけでなく、「お客様の立場に立って考えること」も大切なのですね。
ーー実務経験を積んだ先には、どのような働き方がありますか?
抜水:
電気主任技術者として経験を積んだ先には「自社選任」として企業の電気設備を管理する働き方や、外部の事業場の電気設備を管理する「外部委託」という働き方があります。外部委託には、電気保安法人に所属して業務を行う方法と、個人で「電気管理技術者」として独立する方法があります。
電気管理技術者として独立するには、電験三種の場合、原則5年(保安管理業務講習を修了すれば3年)の実務経験が必要で、経済産業省の産業保安監督部による要件の確認を経て、お客様の設備の保安管理を受託できるようになります。そのため、まずは現場で経験を積み、電気設備の保安に必要な知識や技術を身につけることが大切です。
ーー独立には、どのような魅力がありますか?
抜水:
独立すると、自分の裁量で仕事を組み立てられることが大きな魅力です。
一方で、独立には営業面での苦労や、機材の準備、24時間365日の緊急時に対応する体制づくりなど、技術以外にも考えなければならないことがあります。
だからこそ、独立を目指すのであれば、技術や資格だけでなく、現場経験やお客様との関係づくりなど、独立後を見据えて幅広い力を身につけておくことが大切です。
ユニバーサルエコロジーでは、独立を目指す社員を支援する制度も用意しています。開業時の資金面の支援や、独立後の案件紹介など、独立に向けたサポートも可能です。現場で実践的な経験を積みながら資格を取得し、将来的に独立する道だけでなく、社内でキャリアアップする道も含めて、一人ひとりが自分のキャリアを選択できる環境を整えています。

ーー最後に、電験三種を取得した方や、これから取得を目指す方に向けて、メッセージをお願いします。
抜水:
電験三種に挑戦している時点で、皆さんはすでに将来のキャリアに向けた一歩を踏み出しています。
実務経験がないからといって「自分には無理だ」と考える必要はありません。まずは、自分がこれまでどんな仕事をしてきたのか、そしてこれからどんな技術者になりたいのかを整理してみてください。
そのうえで、
「今の自分には、どんな経験が必要なのか」
「どこで経験を積めばいいのか」
「これまでの仕事や経験は、実務経験として活かせるのか」
「将来的にどんな働き方をしたいのか」
を考えていけばいいと思います。
電験三種の取得をゴールにするのではなく、そこから自分の経験や強みをどう積み重ねていくか。それが、資格をキャリアにつなげるということだと思います。
電験三種を取得した後、どこで、どのように実務経験を積むのか。
これまでの経験をどう活かせるのか。そして、将来どのような技術者を目指すのか。
資格を取得した方はもちろん、これから電験三種の取得を目指している方や、勉強中の方にも、電験三種を取得した後の働き方やキャリアを考えるきっかけにしていただければと思います。
あなたの経験や資格が、電気保安の仕事でどのように活かせるのか、キャリア診断でチェックしてみませんか?未経験の方や、まだ資格を取得していない方も診断できます。
▼ 電験三種 × キャリア診断
あなたの電験三種、どこまで活かせていますか?
https://denkihoan-career.unieco.co.jp/denken_career_app.html
▼ 電験三種キャリアウェビナー
電験三種の活かし方や、実務経験の積み方、キャリアについて解説するウェビナーを定期的に開催しています。次回の開催予定や詳細はこちらからご確認ください。
https://denkihoan-career.unieco.co.jp/denken_webinar_lp.html?mv
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